さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「・・・ちょっと抜け出そうか。」
「へ?」
悪戯に口角をあげる。
その言葉の意味が理解出来なくて、首を傾げた。
「町にでもくり出そうか。」
そう言うと沖田さんは私の手をぐっと掴んだ。
み、みんなが見てるのに!
丁度その時、私たちの目の前を通過しようとしていた土方さんが目を見開いている。
他の隊士さんも、一体どうした、というようにこちらを見ているし。
「お、沖田さ・・・」
「土方さん!俺ら今日は稽古休みます!」
えええ!?
そんな事したら、確実に土方さんの雷が落ちる。
「お前らぁ!!!」
ひええ、やっぱり!
思わず目をつぶる。
それでも、沖田さんが歩みを止めることはない。
いいのかしら。
ちょっと不安に思いながらも、私も足を止めずに屯所から抜け出した。