さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「誰っ!?」
半分叫び声のように出た声にその人はふっ、と鼻で笑った。
「俺は、烝。」
その人はすすむ、と名乗ると私の前にしゃがみ込んだ。
鋭い瞳に捕らえられて動けない。
そう思っていると、燕は私の顔を両手で挟んだ。
「何すんの!?」
「ふーん、なかなか良い女やん。」
なんか、ドラマで聞き慣れたようなベタな台詞。
しかも、関西弁。
「お前は、わかっておらへんよ?」
「なに言ってるの。」
この人、なんだか気味が悪い。
真っ黒の衣装がそうさせているのかもしれない。
「お前、この屯所内に何人の男がいるか分かるか?」
「70人くらいでしょ?」
夕餉をその人数分頼まれたから、きっとそのくらいだと思う。