Vrai Amour ~咲子の場合~
「・・・もう、遅いかしら」
もう二度と離れられないと確信を持って、そう尋ねてみる。
「・・・こんなにおばさんになっちゃって・・・」
涙をこぼしたまま、呆然としている朝比奈の沈黙に耐え切れず
そんなふうに笑ってみせた。
「しかし、秋緒様は・・・」
当然聞かれるだろうと思っていたので、動揺はせずに済んだ。
「もう、いいの」
そう。
全部終わった。
ようやく、私は私になれる。
「これからの人生は、あなたと一緒に生きていきたいの。受け入れてもらえるかしら」
返事はなかった。
朝比奈はただ頬に触れた私の手の平にキスをした。
少しだけその指先が震えているのを感じていた。