Vrai Amour ~咲子の場合~
「ただ・・・」
「ただ・・・?」
「初めての夜のこと、ずっと後悔してて・・・」
その言葉に胸がヒヤリとした。
「私を抱いたこと?」
「・・・いや、そうじゃなくて・・・その・・・」
違って良かったと胸をなでおろす。
あのことで30年も駿を苦しめていたとしたら、本当に申し訳なく思う。
「・・・優しく、してやれなかったから・・・」
駿はそっと私を抱き寄せると、真っ赤な顔を隠すように私の首筋に顔を埋めた。
私はその駿の頭を抱きしめるようにして、そっと撫でた。
「じゃあ、もう一度やり直そう、私たち」
駿はゆっくりと身体を離すと、まっすぐに私を見つめた。
そして、言葉もなくお互いの唇を重ね合わせた。