漆黒の黒般若
「ん、ん…」


目を開くとそこは斎藤さんの部屋だった


「あたし……」



「暑さにやられたんだ」


声のする方を見ると斎藤さんが座っていた


腕を組んでむすっとする斎藤さんがやってくれたのか、おでこには濡れた手拭いがのせてある



「すみません…、また迷惑をかけてしまって」


「本当に、あんたは…。新八と佐之が血相を変えて俺のところにきたぞ?具合が悪いならしっかり言わなくてはだめだろ?あんたはすぐ無理をするからな…」



「…すみません」



「まぁ、でも目が覚めてよかった。当分ゆっくり寝ていろ」



「ありがとうございます。あの斎藤さん…、新しく入る隊士の人達は決まったんですか?」


楠葉は思い出したように斎藤に尋ねた


「あぁ、先程合否が発表されたようで何人かの隊士は今日からここに住んでるようだが…」



「あの、小十郎さんは?楠 小十郎って人はうかったんですか?!」


楠葉があまりにも必死で聞いてくるので斎藤も一瞬たじろぐ


「あ、あぁ。あの平助とまともにやり合った男のことだろ?平助は嫌がっていたが山南さんが合格させたみたいだが…、その男に何かあるのか?」



「い、いえ。あの強かったので入ったら手合わせでもしたいな、と思って」



「手合わせなどだめにきまっているだろう…!総司の件でまだ懲りてないのか?あいにく俺は自分の小姓を添い寝用に貸し出す気はないからな」


「あ、はいっ」


「わかったら、さっさと寝ていろ」


そう言って斎藤さんは布団をかけ直してくれる


また隊務に戻った斎藤さんを見送るととてつもない嫌悪感が胸をしめた


なんであたし嘘なんかついたんだろう…


“小十郎さんが裕に似ている”


そう言えばいいものを、とっさに口から出たのは嘘だった


そんなあたしに優しくしてくれる斎藤さんに後ろめたくて、あたしは自分に失望した



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