漆黒の黒般若
部屋につくと、しいた布団の上に彼女を寝かす


まだ荒い呼吸を繰り返す彼女に眉をひそめる


「今、楽にしてやるからな」



そういうと俺は氷と手拭いを取りにいった



あの娘が心配でつい早歩きになっていた斎藤に誰かが声をかけた




「あ、一くん。お疲れさま、今日見回りだったんだろ?さっき外に土方さんと総司が居たけど何かあったの?」


人懐っこそうにいいながら歩いてきたのは平助だった


「平助か。すまぬが今立て込んでてな、何かあったのかは事実だがそれについては明日にでも副長から幹部をあつめて話があるだろう。今俺の口から言えることはこれだけだ、すまないな…」



眉をひそめて謝る斎藤に平助は笑いかける


「いや、俺のほうこそごめん。急いでるのに止めちゃって…」


こういった斎藤の律儀さが幹部や隊士たちの信用に深く繋がっているんだと平助は思った








手拭いと桶を持って部屋につくと彼女は呼吸も安定していた


よかったと思う半面、どうしてこんな体で無理をしていたんだ


と苛つく気持ちもあった



人の気持ちには敏感な斎藤もなかなか自分の気持ちに気づかないでいた





濡れた手拭いを置いてやると気持ち良さそうにする彼女の顔を見てほっとした


見ず知らずでしかもこいつは我々に害をなすものかもしれない

しかしなぜかこの娘は大丈夫な気がした

それはなにか証拠などがある訳でもなかったがそう思ったのだ



眉を寄せて顔を熱で赤くした娘の頭をそっとなでてやると彼女は安心したかのようにすやすやと寝息をたてはじめる




こうして斎藤は一晩中彼女の隣で過ごしたのであった





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