俺だけの花嫁
玄関の入口には色の白い儚げな雰囲気の綺麗な女性。
「元気だった…?」
女性は少し遠慮がちに話しかける。
春香………。
そう。そこには春香が立っていたのだ。
「伊織…。何年ぶりかしら。あの…」
春香の手がそっと俺の方に伸び、ハッとする。
その小さい華奢な手が触れる前に、俺は真琴の手を引き、春香の横を通り過ぎた。
「伊織っ!」
呼び止められ、意志とは逆にピタッと足が止まる。
振り向いてはいけない。
「俺…結婚したから。」
そう低く呟いて庭を横切り、門を出て行った。
春香が追いかけてきたり、何か言ってきたすることはなかった。