星の見えない夜
彼女はそうだよーと応えた。


「愛はそこにあっても、愛だと思わなければあることに気付けないんだよ」


真冬の深夜に人を呼び出しておいて、何が愛だ。

バカバカしい。

そう思って、凶器のように冷えたベンチに座っていたら、彼女はいつのまにか俺のそばにいた。

唐突に、彼女が問う。


「敦は何を見ているの?」

「別に何も見ていないさ」


そう答えたら、彼女はふんと鼻を鳴らした。


「じゃあ、目をつぶってごらん」



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