星の見えない夜
彼女の声がした。


「じゃ、目をあけてみて。

……何か、見える?」



目をあける。

世界が開いた。


俺は、夜には闇しかないと思っていたが。


街灯の光芒。

風にゆれる並木。

ほわほわとした白い呼気。

赤くそまった頬と、小さく光の映り込んだ瞳が見える。


俺は答えた。



「君が見える」



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