ピアノレッスン
散々、指で焦らされて身体のあちこちに赤い印がつけられる。


「・・・っ・・・ん、あっ」


唇から漏れてしまう声は、もう我慢できない。

うっすらと目を開けると、月明かりに肌を晒した秋月の切ない顔が見えた。


「・・・俺から離れられなくしてやる」

ふっと笑ったと思うと、秋月は私の中に入ってきた。

「・・・っ・・・」

そして、奥まで進むと身体の奥がきゅんとして私は秋月の腕にしがみついた。

「・・・何、可愛いことしてんだ」

秋月は強引に私の唇を奪うと、いきなり激しく動き始めた。

「んっ・・ふ・・っ」

苦しいのに、だんだん変な気持ちになってきて何かにしがみつきたくなる。

「・・・亜澄」

唇を離されて耳元で聞こえた声は、今まで聞いたことのないような甘さで私を煽る。

「・・・・あ・・・イチ・・・っ」

私は初めて秋月の名前を呼んだ。

口にしたら、自分が思っていたよりもずっと愛しい名前だったことに気づく。

「・・・くそ」

秋月はそれに照れたように、さらに激しく私を揺さぶった。

だけど、今までのように一方的ではない。

私の頬を撫でる手も、時折重なる唇も、呼んでくれる名前も

全部が甘く優しい。

私はすべてを預けるように秋月の首筋を抱きしめる。

「・・・亜澄・・・」

そうして最後に聞こえたのは、耳元でささやかれた一番聴きたい言葉だった。
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