彼女志願!
「私……お父さんやお母さんが望むように、大学にも行けなかったし、お姉ちゃんたちみたいに、堅実な仕事にもつけなかった。そんな自分のことずっとみそっかすだって思ってた。だから、逃げるように家を出たし、その後も実家が自分の居場所とは思えなくて……逃げ回ってた」
「萌……」
「私ね、書くことが好きなの。小さいころからずっと空想ばかりしてて、作家になろうなんて思ったことなかったけど。運よく賞を貰えて、デビューできて、書くことを仕事に出来て、嬉しいの。
物語を作って、文字に残す。確かにただの娯楽で、高尚な文学賞を貰える作品ではないけれど、それでも全国に、私の書く小説を楽しみにしてくれる人がいて、お金を出して、私の書いた小説を買ってくれる人が何万人もいると思ったら、すごく幸せなんだ」
「幸せ、なの?」
お母さんが驚いたようにささやく。
その顔を見て、今更ながら気づいた。
お母さんはお母さんなりに、私の幸せを祈ってくれていたってことに。
「うん。幸せ。そりゃ、本になるまでは死ぬほど大変だし、出た後も一冊も売れずに返本される悪夢を見るくらいきついけど、でも幸せ」
「――そうだったんですか?」
今度は隣に座っていた穂積さんが、驚く番だった。