彼女志願!
「違う……?」
「ええ。違いますよ。僕が悩んでいたのは、実家のことです」
「実家の……」
穂積さんは、去年私に言った。
「人間を信じていない」って。
人間とおおざっぱにくくってしまっているけれど
それは要するに、家族も信用していないってことだ。
「――」
無言になった私に、穂積さんは「心配しないで」と、にこっと微笑んで言葉を続ける。
「僕の実家……本家は、瀬戸内海の小さな島にあります」
「瀬戸内海……」