アタシの人生に華が咲く
一人娘だったマチコさんは、婿養子を条件に結婚を許してもらったらしい。
よくわからないけど、老舗っていろいろ難しいんだなぁ。
鯛焼きを半分くらい食べながらそんなことを考えていた。
『ねぇ?小巻ちゃん、いま年いくつだっけ』
マチコさんの唐突な質問に少し驚き、むせつつも答える私。
『え、29だけど……なんで?』
『いい人いないの?いるでしょ、一人や二人』
言い忘れてたけど、うちの常連さんは、いろいろよくしてくれるけど、お節介なところもあるのだ。
年を聞くイコール結婚話と、だいたい決まってる。近所の人はみーんな聞いてくるから何が言いたいかわかる。
『二人なんて贅沢だわ。一人だっていないのに。あ、お見合い話は結構よ、今のところ結婚する気はないの、大丈夫。心配しないで』
そう?と残念そうに首を傾げるマチコさんが、なんだか可愛くて、私はクスッと笑った。
私は本当に恋愛や結婚に興味がないのだ。そう、自分の両親を考えると魅力を感じれなかった。
ひとりの方が気楽でいい。ずっとそう思い続けてきた。
『さて、そろそろ店に戻ろうかしら。小巻ちゃん、ごちそうさま』
マチコさんはベンチの上に200円を置いて帰っていく。
『あ、待っておつり』
『いーのいーの、小巻ちゃんにおだちんよ』