アタシの人生に華が咲く
うちの鯛焼きはひとつ80円で売っている。
これはじいちゃんが経営していたときから変えていない。私が変えたくないと思っているから。
正直、破格的ではあるけれど、値段は上げるつもりはないのだ。
店を知る人からは、経営の心配もしてくれたり、アドバイスもらったりしたけど、私はこの“佐久間屋”のスタイルを変えたくなかったのだ。
マチコさんは、いつも200円置いてって、おつりは、おだちんよって言う。
だからそのおつりを貯めては、マチコさんのお店で抹茶を買うのだ。
私は作法とかそんなの知らない。だけど、茶筅でたてた抹茶を飲むのが今の私のマイブーム。
私は、ありがとうと、お礼を言って、おつりの40円を居間にある戸棚の上の“抹茶貯金箱”に入れた。
チャリンチャリンと貯金箱を揺らし、中身の量を確認して また棚に戻した。
風がふわっと顔をよぎる。お客さんがいない店の中はものすごく静かで、新鮮な空気だけが小さく音をたてて入ってきた。
この瞬間が、ときが、私はたまらなく好き。
そして気ままに駄菓子の入ったガラスケースを磨いたり、新聞を読んだりして午前中を過ごすのだ。