アタシの人生に華が咲く
そして、話は最初に戻る―――。
※
鯛焼きの予約注文を終えた、のぶ世さんが裏庭からでていった。
我が家には小さいながらに、裏路地につながる庭がある。
お店が開いてないときは、裏庭から入ってくる人多数。
みんな隣接しあったご近所さんだから。
居間で朝ごはんを食べていた私も、食器を洗って、店に出た。
シャッターを勢いよく開けると、向かいの湯本豆腐店の保おじちゃんが、すでに営業をはじめている。
『おう、小巻ちゃんおはよーさーん』
大きな水槽の中でこれまた大きなお豆腐を包丁で切りながら保おじちゃんが挨拶をしてきた。
『小巻ちゃん、今日もかわいいよー』
『うん、知ってるー』
と、いつものノリで返すのが日課になっていたりする。
私は一旦店の奥に戻り洗面台に向かった。
鏡を見ながら、腰に届きそうな程の長い髪を、頭のてっぺんでおだんごにしてまとめる。
そしてエプロンをつけ、居間を出たらボロボロになった健康サンダルを履いて、鯛焼きの準備を始めるのだ。
するとそこへ、薄汚れたスウェットパーカーのフードを目深にかぶった一人の男が店の前を通る。