アタシの人生に華が咲く
『あ、リョータ!』
店の外からでも鯛焼きをテイクアウトできるように作った窓から、私はその男を呼び止めた。
彼は、小学生のときからの幼なじみで、同じ商店街の宮内酒店の長男だ。
『おう、なんだよ』
無造作に散らかった前髪に無精髭の胡散臭い風貌で、ダルそうにこっちに近づいてきた。
『いつものアレ無くなったからまたケースで頼むわ』
『はぁ?もう飲みあげたのかよ!お前あんなん飲んでばっかいるとビョーキになるぞ』
私の言う“アレ”とは外国産のチェリービールのことだ。
商店街のクジで、たまたま当てた日帰り温泉に行ったとき、これまた、たまたま寄った輸入商品を置いた店で見つけてハマったものだった。
普通のお店ではなかなか手に入らないから、酒屋であるリョータに特別取り寄せてもらっているのだ。
『親じゃないんだからイチイチうるさいよ』
『ハイハイ毎度~』