この恋が叶わなくても
うつむく、あたし。
そして、
『知っているんですか?』
少し弱気な声で尋ねた。
「大翔のこと?」
あたしはただ黙ってこくり、と頷くと、それを見ていたのか裕也先輩はちょっぴり困りながら口を開いた。
「知ってる」
『……じゃあ、大翔とあたしのことも、ですか?』
「ああ」
裕也先輩って一体、大翔とどんな関係にあるの?
どうして、あたしのこと…
「大翔の彼女でしょ」
『えっ…?』
「ほら、その顔。すごく正直」
ふと裕也先輩を見ると、相変わらず寝転んでいる裕也先輩と目が合った。
そして、裕也先輩は少しだけあたしのことを馬鹿にしたようにクスッと笑った。
『ちがいます…っ。あたし、彼女じゃないです』
「じゃあ、何なの?」
裕也先輩は何も知らない様子だった。あたしが照れて、彼女ということを裕也先輩に隠したいだけだと思っているようだった。
本当のこと、言わなきゃ。
『…………元、カノ』
聞こえるか聞こえないか、そんな程度の小さな声で呟いた。
大翔のことを思い出してまた泣いてしまいそうだったから。泣きそうな顔、会って間もない裕也先輩には晒したくなかったから。
バレないようにうつむいた。