竜王様のお気に入り
ハクリュウは、ヤヨイの耳元に自分の顔を寄せて、イオリに聞こえないよう小声で囁いた。


「思っていたよりも早く、人間界に下りれそうだよ。
そんな段取りをしてたんだ。」


ヤヨイの向日葵のような笑顔が見たくて、ハクリュウはそっと耳打ちした。


まんまとその笑顔を手に入れたハクリュウは、満足そうに微笑を返す。


ヤヨイはいよいよ現実的になってきた話しに、少なからず困惑したが、素直に嬉しかったのだ。


そんな仲睦まじい二人を目にして、命に代えても守ろうと、改めて決意したイオリ。


「ヤヨイ様。
竜王陛下とお幸せにおなり下さい。
コハク様とコウリュウ様の分も。」


そう言うと、イオリは立ち上がり深く一礼してから、退室して行った。


ちょっとだけ、幸せのお裾分けをもらった気分で、イオリの顔にも優しい笑みが浮かんでいた。


イオリの性格を逆手にとって、こうなるように竜王に誘導されていた、とも知らずに。

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