竜王様のお気に入り
ハクリュウは、ヤヨイに聞こえないように、ぼそっとコウリュウに耳打ちした。


「イオリは信頼できる女だぞ。」


コウリュウは少しだけ眉を動かして、イオリの背中に視線を落とし、照れた様子で答える。


「そんなの分かってる。」


長年のわだかまりも、解けていきそうだと兄と弟は思った。


たった少しの言葉の足りなさやすれ違いで、誤解や孤独を招き、随分とお互いを遠ざけていたようである。


ヤヨイの真っ直ぐな性格が、生気を貰う事でハクリュウの中に流れ込み、コウリュウの言葉にも、耳を傾けられるようになったのであろうか。


何にせよ、兄弟にとっては久しぶりの、穏やかな会話であったのだ。

< 212 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop