アラサーだって夢をみる【12/23番外編追加】

三神さんはそれを見逃さなかった。

「まだ足りないの？」

中に埋めていたものを引き抜かれ、入り口で止まる。　
またいれられたら、と思うと怖くて、私は答えた。

「む、り……です」

「聞こえないよ」

「信じるなんて、無理です……っ」

「なんでだよ」

「だって……三神さんあんなにファンがいるし」

「それで？」

「昨日会ったばっかりなのに、
　私なんかに本気になるわけないでしょ？」

「沙理はどうなの」
「俺の事嫌い？」

嫌いなわけないのに。
大好きなのに。
首を振ると、「じゃあ好き？」と聞き返されて躊躇した。
　　
「言わないとわからないよ」

どうなのと頬を撫でられて、もう誤魔化すのを止めた。

「好きです、けど」

「けど？」

「好きだけど、これ以上好きになったらだめなの」

「どうして？」

「三神さんと私なんてあり得ないの」

「だから、どうして？」

「遠いし、結婚してるし」

「そんなの関係ないんだよ」

「だめなの」

自分でもどうしていいかわからないのに。
私はとうとう思ってた事を吐き出した。

「絶対無理なの。
　どうしてそんな事聞くの。
　もう嫌なの。
　どんなに好きになったって、どうしようもないのに。
　無理に決まって……」

途中で口を塞がれた。　

「なんで……決め付けるんだよ」

口を塞いでる三神さんの手が震えてる。

「声優だから？」
「住む世界が違うから？」

声も震えてる。　

「それがどうしたっていうんだよ」
「俺の何がわかるんだよ！」

どんな作品でも聞いた事がないような声で。

「俺は沙理がいいんだよ！！」

肩を押さえつけられて、再び三神さんが埋め込まれる。
声を上げる間も与えてくれない。
さっきよりも、もっと激しく責められて何度も目の前が真っ暗になる。
やめてと叫んでるのに、言葉にならない。
息、できない。