アラサーだって夢をみる
物凄く目立つ……ような気がする。
周りの視線が痛い。
特に女子の。
「あの、三神さん、こういうのは拙いんじゃないでしょうか」
「なんで? 恋人に会うのに隠れる必要ないじゃん」
「で、でも……」
「声優の顔なんて一般人はわかんないって言ったろ?」
「もし知ってる奴がいたって、30過ぎの男性声優の恋愛なんて記事になんないよ」
そんなことないと思うけど……。
そうじゃなくても、こんな美形が歩いてるだけで注目浴びてるのに。
なんとか離れようとしてる私に三神さんが顔を近づけてくる。
「久しぶりに会えたのに、これで我慢してるんだよ?」
本当はすぐにでも押し倒したいのに、と囁かれて、名前を叫びそうになったのをのみこんだ。
この調子じゃ、何をされるか。
最初に言っておかなきゃ。
「あの、実は今夜……」
家族に全部嘘だと後ろめたいので腐女子の友達と食事の約束をしている事を伝えた。
「何処で?」
「六本木です」
ああ、あそこかと三神さんは頷いた。
腐女子に人気のお店を知ってるらしい。
「2時間ぐらい行ってきますね。
でも後はずっと一緒に居て下さいね。
明後日もゆっくり帰ってきていいって言われましたから」
きっと無理してスケジュール空けてくれたはずなのに。
少しの間でも別の予定を入れてしまって申し訳ないと思っていた私は、三神さんがうんうんと笑ってくれたのでほっとした。