ランデヴー
それなのに、倉橋君はそんな私をそっとしておいてはくれなかった。


私の手を掴んだまま膝を立てて1歩近付くと、反対の手で私の後頭部をグッと引き寄せる。



「え、何……?」


いきなりラブシーンのようなこの不自然な体勢に、私は驚くことしかできない。


倉橋君のこの行動の意味がわからず鈍く抵抗するが、力強い彼の手が緩むことはなかった。



何? 何なの?


私がそんな目を向けると、倉橋君は苦しそうに顔を歪める。


その瞳は憂いを帯びた光で濡れていて、初めて見るその表情はまるで泣き顔のように見えた。



私は驚き、とっさに息を呑んで固まる。



「好きだったら何してもいいんだ?」


倉橋君はその目で、私を責める。



「気持ち、止められなかったら止めなくてもいいんだ?」


泣きそうなその目で、私を責め立てる。



「だったら俺のこの気持ちも……止めなくていいんだよね?」


そんな言葉を吐くと、倉橋君は私の後頭部を支える手に力を入れてグイッと引き寄せ、魅惑的な唇で私の唇を塞いだ。
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