ランデヴー
「ちょっと、何考えてんのよ……!」


急いで彼から後ずさり、身なりを整えた。


上がる息は乱れ、ドキドキする胸は壊れそうな程に騒々しい。


それ以上に誰かに見られたんじゃないかと気になって仕方ない私は、デスクの影からキョロキョロと辺りを見回してみた。


でもパーテーションで区切られた部署内の様子は誰の目にも止まることなく、夜遅く残っている人も少ない為か、幸い変わった様子は見受けられなかった。



「何って……坂下さんと同じこと?」


全く悪びれてないような声に顔を向けると、倉橋君は背中を押さえながら顔をしかめていた。



「……同じ、こと?」


何を言っているんだ、この男は……。


相変わらず理解できない倉橋君の言動に、私は思いきり眉を寄せる。



でも。



「好きだったら何してもいいんでしょう?」


倉橋君のその言葉に、私の思考回路が完全に止まった。



「好きだから、キスしたんだけど?」


言葉の意味を飲み込めないままにゆっくりと首を傾ける私に、倉橋君は更に言葉を重ねた。
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