ランデヴー
少しの沈黙の後、倉橋君がスッと息を吸い込み口を開いた。



「さっき……香川さんと何話したの?」


「……え?」


唐突に聞かれ、まだ思考が完全復帰してない私は気の抜けた声で聞き返す。



「……泣いてたから」


「あ……」


非常階段での別れ話――。


でも、このことは絶対に倉橋君には言いたくない。



「別に……」


いつの間にか彼の背中をさする私の手は止まっていた。


俯き落ち込んだ様子の私に気付いたのか、倉橋君は小さく首を振った。



「ごめん……でも気持ちが抑えられないっていうのは、俺も一緒だから」


「…………」


「このまま続けても、坂下さんだけが傷つくのわかってるし」


「…………」


「もう、そんなこと……終わりにした方がいいと思う」


「…………」
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