ランデヴー
そんな自分に苛立ちながらもノロノロとカバンの中から携帯を取り出し、駅へと向かう人の流れに合流する。


流れに合わせて足を動かしながら、私は2つ折りのそれをパカリと開いてディスプレイを見た。


その途端――私の足はピタリと止まり、その場から動けなくなった。


突然立ち止まった私の体を人々が忙しそうに追い越して行くが、そんなことは気にしていられない。



差出人は『香川 陽介』。



瞬間うるさく鳴り出す心臓と、震える足。


嬉しい気持ちと同時に沸き上がるのは、怖いという感情だった。



あんなに待ちわびていたはずなのに、何が書いてあるのかと思うと緊張で体が動かない。


私は道路脇に避難すると、激しく鼓動を繰り返す胸を抑えて大きく深呼吸をする。



どうしよう……見たくない……。


でも、見たい……そう、見たくないはずがない、そんなの見たいに決まってる。



心の中でそう結論づけると、私は震える指でボタンを押した。


すると目の前に映し出される、たった1行の文字。
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