ランデヴー
「あ、悪い……。いや、正直……堪えるな……」


「え?」


「ゆかりの口からその話が出るとは思ってなかったから……。うん、何か……キツいな……」


そう言って寂しそうに笑う陽介に、私は一気に泣きたい気持ちになった。



キュッと胸が締め付けられて、今すぐにでも抱きつきたい。


別れたくない、ってすがりたい。



でも、私は動けなかった。


どうすればいいのかわからず、ただその場に硬直してしまっていた。



陽介はずるい……そんなことを言うなんて、ずるいよ……。



「ごめ……」


「いや、違うんだ。ゆかりが謝ることじゃない」


色んな気持ちが重なって口からこぼれた謝罪の言葉に、陽介が慌てたように首を振る。



この話は2人にとってタブーな内容なのだと、改めて思い知らされる。


と同時に、奥さんの存在をよりリアルに感じることになってしまい、私は逃げ出したい程の衝動に駆られた。
< 201 / 447 >

この作品をシェア

pagetop