ランデヴー
この時、私はようやく全てを理解した。


陽介が私に別れを切り出した理由を。


新しい生き方を選んで欲しいと言った理由を。



でも……ふと、私の頭に別の考えが浮かぶ。



「もし……もしも……」


私は張り付いたようにカラカラの喉を掠れさせながら、震える唇を動かした。


陽介は真摯な目で、私の言葉の続きを待っている。


私は1度コクリと喉を鳴らし、口を開いて小さく息を吸い込んだ。



「私がそれでもいい、って言ったら……?」


陽介の瞳が一瞬大きく見開かれ、キュッと苦しそうに眉を寄せる。



「子供がいても……それでもいいから傍にいて欲しい、って……。そう、言ったら……?」



私は狂っているのかもしれない。


ここまで来たらもう別れるべきだと、痛い程にわかっている。


それなのに……口は言うことを聞かずに動き続ける。
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