ランデヴー
あの時の痛みは今も忘れることができないし、またあの時のような思いをするのが、怖い。


少し恋愛に臆病になってしまったかもしれない。



「そう言えば……香川さん、異動するんだってね?」


佐和子が少し声のトーンを落として、呟くように言った。



そう……3月中旬付の辞令で、陽介は宣伝部に異動することが発表された。



「うん。多分……自分で希望したんじゃないかな?」


陽介のことだから、私に気を遣ってそうしたんだと確信していた。


彼はそういう人だから。



もちろん、それだけが理由ではないかもしれない。


今の部署は長い間在籍していたから、気分転換という意味でもそれは陽介にとっても良いことなのかもしれないと思った。



そして陽介の異動を、私は割と冷静に受け止めることができていた。


あれからもう半年が経とうとしているし、それに……。
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