琥珀色の誘惑 ―日本編―
だが、それをボーッと見ているのも、どんなものだろう。

そんな舞の不満は、王子により実にアッサリ却下された。


「ターヒルは私の命令がなければ出て行かない。それ以前に、私たちはふたりきりになる訳にはいかない」


おそらく、ターヒルが話してくれた理由で、それがクアルンでは正式なものなのだろう。

だが、舞の中に新たな疑問が浮かび、思わずミシュアル王子に尋ねてしまった。


「じゃ……あの、もし、もっと先までふたりが進んだら……ターヒルってどうするの?」

「どうもしない」

「どうも?」

「彼らは王太子である私の命令に絶対服従だ。私が止めろと言えば制止する。出て行けと言えば出て行く。何も言わなければ、命ずるまでその場にいるであろう」


舞の顔は採れたての苺のように真っ赤になった。


「も、もちろん、そういう時は出て行けって言うのよね?」

「どうした、舞。そんなに試してみたいのか?」


ミシュアル王子は再び舞に向かって踏み出し、両手で舞の頬を挟む。
その指に強引な感じはなく、鳥の雛を包み込むように優しげだ。


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