琥珀色の誘惑 ―日本編―
それが……突如現れた婚約者は、シークの上に王太子の称号まで持っていた。
正直、舞には手に余る状況だろう。

でも、白馬に乗った王子様、をあんなふうに解釈して、白毛馬まで購入し、民族衣装を着て乗って来てくれた。


舞は心の内で、ミシュアル王子の情熱的な言葉を期待した。

だが……。


「舞、これは運命により決められた結婚だ。愛とは無関係だ」

「ア……ル」

「私は両親の選んだ娘を花嫁とし、王位を継ぐ。心配は要らない、結婚生活に必要な愛は惜しみなく与えよう。無垢な花嫁であるなら尚の事だ」


張り詰めた見えない糸がプツンと途切れた音がした。

頬に添えられた王子の手を舞は振り払う。

そのまま回れ右をして、豪華なスイートルームから出て行こうとした。すると、ミシュアル王子は飛びつくように舞の左手を掴んだ。


「待て! 必要な愛は与えると言っている。順番が違うだけで結果は同じなはずだ!」

「全然違うわよっ! アルの馬鹿!」

「お、お前……」


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