琥珀色の誘惑 ―日本編―
事態の急変に舞の心は追いつけない。


天蓋の天井部分にもアラビア風の綺麗な布が張られている。

それが目に入り……初めて舞は、自分が仰向けに寝かされたことに気づいた。

そして、王子の手により瞬く間に服を脱がされていった。



これまで、何を言われても、どんなに悲しくても、歯を食いしばって堪えてきた。

なのに、頑丈に築き上げた心の防波堤が、音を立てて崩れてしまう。


“いつか王子様が……”


王子様は、舞をお姫様のように大切に扱ってくれると信じていた。
心から愛して必要としてくれる人――その訪れを心のどこかで夢見ていた。


本物の王子様は要らない。

心が本物であれば……それだけだった。


舞は体と一緒に心まで無防備にされてしまう。

涙が込み上げ、滝のようにこめかみを流れて行った。

やがてしゃくりを上げ、嗚咽を漏らすほどに……。


舞の心に芽生えた恋心は、情熱の熱さに焦がされ、萎れていくしかなかった。


< 87 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop