王子様は囚われ王女に恋をする
市街に入ると、街の様子が珍しくて
アリシアは窓の外ばかりを見ていた。

「そんなに珍しい?」

その様子がおかしかったのか
カイルはクスッと笑いながら聞いた。

「はい、他国の市街に来るのは初めてなんです」

アリシアは声が弾みそうになるのを抑えながら
冷静を装って返事をした。

「そうか。じゃあ、少し歩いて見て回ろう」

カイルは店が立ち並ぶ通りのそばで
馬車を止めた。

「さあ、どうぞ」

先に降りた彼に手を差し出されて
ためらいながらもその手を取って馬車を降りた。

地面に足がついて安心して手を離そうとしたアリシアをよそに
カイルは手をつないだまま歩きだす。

「カイル王…っ」

名前を呼ぼうとしたとき
引き寄せられて空いている手で口をふさがれた。

「言ったはずだよ。カイルと呼んでくれと」

耳元でささやかれて体が固まる。

「…んっ」

抗議しようとするアリシアを見て
カイルは目を細める。

「それに市街で王子とバレたら、大変だろ?」

彼の言うことはもっともだった。

口から手を離すとカイルはアリシアを見た。

「分かったね?」

触れ合いそうなほど近くで見つめられて
うまく息ができない。

この距離から早く逃れたくて
彼女はうなずいた。

「いい子だ」

カイルは目を細めて微笑むと
つないだ手はそのままに歩きだした。


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