王子様は囚われ王女に恋をする
その時、ふっとカイルが視線をそらした。

「今日はこのあたりで昼食を食べて行こう」

カイルはそう言うと、アリシアの手を引いたまま
また歩き出した。

しばらく歩くと、庶民的だが小奇麗な店があり
迷わずその中へ入っていく。

「あらっ、いらっしゃい」

明るい声に誘われて顔をあげると
40代くらいのふくよかな女性がいた。

「ナターシャ、久しぶり」

カイルはそう言うと、屈託のない笑顔を見せた。

笑顔は何度か見たことはあっても
子供のような心からの笑顔を見たのは初めてだった。

「2階へどうぞ」

ナターシャと呼ばれた女性は2階の奥の部屋へ案内してくれた。

「カイル様、お連れの方はどなたです?」

部屋に入るとナターシャはアリシアを見て微笑んだ。

「メルディアンのアリシア王女だ」

「そうでしたか。アリシア様、はじめまして。
カイル様の乳母をしておりましたナターシャでございます」

優雅に膝を折ってお辞儀をする姿は品があり
王宮にいたことが納得できた。


< 35 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop