王子様は囚われ王女に恋をする
「ナターシャは僕が成人した後に城を出て
ここで店を開いたんだ」

カイルはアリシアに椅子に座るようにうながして言った。

「市街に来ると決まってここに寄ることにしてる」

「カイル様が訪ねてきてくださるのが
何よりの楽しみなんですよ」

ナターシャは陽だまりのような温かな笑顔を浮かべて
カイルを見る。

「アリシア様もゆっくりしていってくださいね」

「はい、ありがとうございます…」

メルディアンの王女と聞いても態度を変えないナターシャに
アリシアは何となく安心していた。

ナターシャが出ていくと
アリシアはカイルに聞いた。

「ナターシャさんはカイル様の乳母だったのですね」

「ああ、小さいころから母親同然だった」

カイルは頬杖をついて懐かしそうに目を細めた。

「こう見えて僕は小さい頃は体が弱かったから
ナターシャにはずいぶん世話になったんだ。
具合の悪い日は夜も寝ずに付き添ってくれたりしたよ。
だから彼女には頭が上がらない」

いまのカイル王子をみるかぎり
体が弱かったとはとても思えなかった。

「体が…弱かった?」

「昔の話だ」

「もう大丈夫なんですか?」

カイルは質問を繰り返す彼女を驚いたように見た。

「今は健康そのものだ。ブラッドがよく知ってる」

隣のテーブルにイライザと座っていたブラッドに目をやると
彼はアリシアを見て静かに微笑んだ。

「カイル王子は殺しても死なないくらいに丈夫です」

「殺しても死なないって…その表現は引っかかるな」

カイルは少しムッとしたように言う。

「本当のことを申し上げたまでです」

ブラッドは涼しい顔で言い返す。

「お前…王子を敬うってことはないのか?」

「はっきり意見を申し上げる家臣が
一人くらいいたほうがあなたのためです」

2人のやり取りがおかしくて
アリシアは思わず吹き出してしまった。
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