2年3組乙女事情
「ねぇ!校門にいる人が誰か知ってるー?」
「ん? いや、あたしは知らないけど。榎本さん知り合い?」
6限が終わって教科書を鞄に片づけたところで、教室に榎本さんの声が響いた。
榎本さんの声って、何かよく通るんだよね。
それに答える雨宮さんの声は、小さいけどはっきりしてる。
……でも、あの2人いつの間にあんな風に話すようになったんだろう。
「誰かの彼氏かな?イケメンだよね!」
「でも、派手じゃない?」
「いや、雨宮さんは人のこと言えないから」
榎本さんの静かな反論を聞きながら少し苦笑いを漏らす。
そんなあたしの目の前に、果歩ちゃんが慌てた顔で走ってきた。
「校門にいるイケメンって、たぶん……てゆーか、間違いなく律君なんだけど」
「は?」
「たぶん、瑛梨奈ちゃんのこと待ってるんじゃないかな?最近メールの返信してなかったし。
でもヤバいよね? 校門ってどの教室からもよく見えちゃうし、騒ぎになったら先生にも話が伝わっちゃうかも」
心配そうにあたしを覗き込む果歩ちゃんを見て、あたしは思わず顔を伏せた。