主婦だって恋をする

「……どちらさまですか」


そこに居たのはスーツ姿のサラリーマン。
きっと涌井さんの恋人だ。


彼は上半身裸の俺を見て首を傾げる。



「きみは……?」


「えーっと……」



ただの友達です。

そう言いたかったけど、後ろから来た涌井さんが強い口調で言い放った。



「付き合ってるの。この人と」


「……香織」


「だからもう言い訳とかいい。帰って!!」


彼は困ったように眉尻を下げ、しばらく黙ったあと呆気なく引き下がった。



「……わかった」



力なくそう言った彼は、最後に俺の方を見た。



「香織を幸せにしてやってくれ……」


「はぁ……」



俺の間の抜けた返事は、扉の閉まる音にかき消された。


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