純情、恋情、にぶんのいち!


1年女子の綱引きでは、わたしたち白団は2位に終わった。
なかには悔しさに泣いている子もいる。

それを横目に、暑いだの、疲れただの、手が痛いだの、とりあえず見つかるだけの文句を言い続けるさーちゃんを宥めているところに、いきなりひらひらとハチマキが飛んできた。

わたしたちのとはちがう、応援団の人が付けるような、長いやつ。


「誰のだろ……?」


条件反射でキャッチしたはいいものの、持ち主がわからずキョロキョロしていると、やがて前方からまぶしいオーラが近付いてきた。

心当たりがある。

……この、キラキラオーラは。


「ごめんね、それ、おれの!」

「と……とーご先輩……!」


初対面にもかかわらず、あまりに驚いてなれなれしく名前を呼んでしまったわたしに、それでも彼は笑った。

ふは、と息が抜けていく。

やわらかい笑い方をすること、遠くから見ていたから知っていたけど、音を聞いたのははじめてだった。


「はい、とーごせんぱい、です。拾ってくれてありがとう」


なにが、起こっているの。

いま、目の前に学校の王子様がいて、なんの変哲もない村娘Aに話しかけてくれているというの。


にわかには信じられない。

それにしても、高貴な存在というのは、容姿や身分(?)に関係なく、誰に対してもわけ隔てのない対応をしてくださるのだなあ。


……というか。

これ、とーご先輩のハチマキー!!!

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