真紅の世界

もしかして私、変なこと聞いたかな? 聞いちゃいけないことだった?
でも、普通に何でもない事のような気がするんだけど……。

オロオロする私にかまわず、レティは何かを決心したようにひとつ頷いた。
そして私を再び見上げて、口を開いた。


「私たち表の世界の魔法使いが、裏の世界の住人を使役するためには2つ方法があるの」

そこで一度区切ってから、レティは小さな指を一本立てた。

「一つは魔法で呼び出して力でねじ伏せる方法。 これはよほどの魔法を使える人でないと無理だけど、二つ目の方法で私はダリアを使役することが出来たの」


聞いた質問と少し違う答えな気がしたけど、口を挿むことなくレティの言葉に耳を傾ける。レティの指が、もう一本立てられる。


「二つ目の方法はね、魔界の王に刃向ってこっちの世界に飛ばされてきたものを助けるだけなんだけど……。 飛ばされた生き物に遭遇する確率はとても低いし、もし会ったとしてもまだ息をしている場合はとても稀なの」

そう言って立てられていた二本の指は、力なくレティの膝の上に落ちる。
それでもなお、レティは説明を続けてくれた。


「だから二つ目の方法でダリアを使役できた私はただ幸運だったとしか言えない。 そしてそうやってこの世界に来た生き物は、魔法使いと契約しないとこの世界で生きていくことが出来ないの。 たぶん、魔界の王は素晴らしい王様なんかじゃなくて、力でねじ伏せる、きっとバルト国のような王様なんだと思うわ」


レティの言わんとしていることが分かった私は、ダリアを思った。

話から察するに、ダリアはこの世界に来たとき魔界の王にボロボロにされて瀕死の状態だったんだ。


それをレティが助けてくれた。

どんな思いだったんだろう。

それでもダリアを見つけたのが、レティでよかったと心から思った。

さっきのダリアの口ぶりは、とてもレティを想ったうえでの言葉だったと思うから。



孤独は、とてもつらいものだ。

私には施設の仲間や友達がいたけど、血のつながった家族はいなくて。
いつもどこかぽっかりと穴が開いたように淋しかった。

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