真紅の世界

ダリアがしゃべっていることの驚きと、この世界にいる現実味を改めて感じた私は、ただ口を開けて呆けていた。
そんな私にダリアは、フンと鼻を鳴らして『間抜け面』と辛辣な言葉をくれる。


「レティ、ダ、ダリアさんって、喋れるの?」

「えぇ、普通の動物はしゃべれないけど、魔界にいる4等級以上の生き物ならしゃべれるのよ」

『それすら知らないとは無知にもほどがある』


相変わらず辛辣な言葉なダリアは、いったい何等級なのか気になるところだけど。本人に聞いても答えてくれないと思った私は、早々にその疑問を解決することを諦めた。
だって別に等級聞いたって、それが凄いのかどうかも私には分からない。
だからその前の言葉で気になった疑問をぶつける。


「魔界って、どういうこと? この世界の他に世界があるの?」


私の質問に一瞬きょとんとしたレティは、ダリアに「ごめんね、いったん戻って」と言った。
それにコクリと頷いたダリアの姿が忽然と消えて、それを見送ったレティは私の隣に行儀よく座った。

風になびく金色の髪を耳にかけて、その綺麗なスカイブルーの瞳で私を見上げる。


「このブライス、カザリル、ゴベル、そしてバルトのあるこの世界を白とするなら、裏側にある黒の世界が魔界って言われてるの」

「裏側の黒い世界?」


じっと私を見ていたレティは視線を伏せて、私からは表情が見えなくなってしまった。


「ダリアが言うには、その世界には一つの国しかなくて、一人の王様がまとめてるんだって」

「まとめてるのに、どうしてレティはダリアを使い魔として呼び出したりできるの?」


いわゆるその“魔界の住民”であるダリアを、勝手に呼び出したりしていいのだろうか。
素直に疑問に思ったことを口にしたのに、レティは口をつぐんでしまった。
言うべきか言わないべきか思案しているようだった。
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