真紅の世界
上半身を起こして、キョロキョロ辺りを見渡してみても、家もなければ人もいない。
手のひらから伝わるチクチクとした芝生の感触は、しばらく感じたことのなかった懐かしい感触だ。
そんな芝生の海のなかにポツンと座り込む、クマの着ぐるみパジャマ姿の私。
なんて滑稽なんだろう。
っていうかどうしてこんな時に限って、こんなパジャマ着てるんだ。
いやでも、このパジャマは去年施設のみんなからもらったクリスマスプレゼントで、結構気に入っているのだ。
私は、物心つく前からあの施設で暮らしていた。
今では一番年長だった。だからこそ、家事に勉強にチビたちの面倒に、最近反抗期の中学生組の面倒に、真面目に生活していた。
自分で言うのもなんだけど、もし子供ができても全然苦労しないくらいには生活スキルはあるつもりだ。
そりゃ確かに、最近この境遇が辛くて逃げ出したいなぁ、なんて考えたときも少しはあったけど。
小さい時から面倒見てくれていたウメさんのことは、言うまでもなく大好きだし。チビたちも中学生組もなんだかんだ言って好きだし。そんなこと、本気で思っていたわけじゃなかった。
でも、今私がいる場所は、明らかにあの住み慣れた施設があった場所じゃない。
心なしか、いつもよりも空が高く感じる。
「……ここ、どこよ」
吐き出した言葉は、自分が思ったよりも弱弱しくて、それが余計に不安を煽った。