真紅の世界
それでも、こんなこと間違ってるんだよ。
人はみんな平等で、みんな自由に生きる権利があるんだよ。
そう思ってはいても、未だにこの状況を私は変えることが出来ていない。
むしろこの状況に自ら身を置いているのだから、すごい矛盾だ。
やっぱり、私のいた世界は、私がいた日本は、とても恵まれていたんだと思う。
テレビから流れる戦争の映像に胸を痛めていても、平和そのものの日常にいた私にはどこかで違う世界のことだと思っていたんだ。
こうやって違う世界に飛ばされて、他人事だと思っていた悲惨な状況に身を置いて初めて、自分がどれだけ恵まれていたのか実感するなんて、思っても見なかった。
「今日はアレン様のご命令で違う実験を行う」
いつもの様に私と向き合うウルが、やっぱり淡々と言葉を紡ぐ。
「違う実験?」
「毎日同じことを繰り返していても、反応に変化が現れないため88番の魔法は、自己防衛魔法に間違いはない。けれど違う世界の人間が魔法を使えるようになったということは、何かしらの変化が身体の中に起こっているはずだ、とアレン様はお考えだ」
「……身体の、中?」
ウルの言葉を繰り返して頭の中に浮かんだ映像、でもそれが私の思い違いであってほしいと願う。