真紅の世界



恐怖でガタガタと身体が震え始める。

私の震えにも、ウルは顔色一つ変えない。


「88番には魔法攻撃がきかない。よって、今日からは痛みを感じさせない魔法を施すことはしなくていいとのアレン様の指示だ」


言いながら取り出したのは、いつも私を傷つける剣とは違う、それより小ぶりな何の変哲もない小刀だ。


その切っ先が、薄暗い地下室を照らすぼんやりとした灯りに反射して鈍く光る。


この世界では、魔法原点となる力はその人の額の奥にあると言われていると、レティとの魔法学の勉強で習った。

ウルみたいに額に宝石のようなものが埋め込まれている人は、元の魔法力が微力で、力の強いものによって痛みを与えることなく補助の魔力の込められた魔石を埋め込まれたんだと。


魔法の力を調べるのはそれ専用の魔道具があって、それに手をかざすだけでその人の魔力が分かる。
その数値によって、魔石を入れるか入れないか。どれくらいの補助が必要なのか判断するらしい。

私も試してみたけれど、魔力の数値はあらわれなくてレティに不思議な顔をされてしまったのは記憶に新しい。


つまり、アレンは魔道具で調べても魔力がないはずの私が魔法が使えるのは、私の額の中にこの世界の人とは違う、魔道具では測れない魔力の源があるからなんじゃないかと思ったから私の身体を調べる、ということなんだろう。

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