真紅の世界
助けて。
誰も助けてくれないと、分かってはいても私は心の中で助けを求めた。
助けて。
私を元の世界に戻して。
魔法なんか使えなくても、ウメさんがいてチビたちがいて、家族に囲まれて幸せだったあの世界に戻して。
スッと音もなく手を水平に上げるウル。
その掌が一瞬光ったと思ったら、その手の中の小刀の柄が、一瞬にして細かい綺麗な装飾がされていた。
何の変哲のない小刀が変化した理由なんて分からない。
でも、その変化は絶対私にとっていい物なんかじゃない。
「……すけて、」
震えながらも微かに出た声にならない声は、きっと近くで耳を立てていても聞こえないほどか細いものだった。
ジリ、と後ずさってウルと距離を取ろうとしても、ウルは構わず私との距離を詰めてくる。
「たすけて、」
ゆるゆると首を振ってウルを見つめたまま口にするけれど、ウルに表情の変化は見られなくてそのかわりに柄を握る手に力が込められる。