惑溺
リョウは私達が出てきたホテルを見上げ、そこに掲げられたブライダルフェアの看板に意味深に笑う。
「あー。これが噂の婚約者?」
そう言いながら、面白がる様に私達の事を冷たい視線で見た。
……やめて、お願いだからやめて。
私はどうしていいのかわからずに、ただ小さく震えていた。
もう二度と会わないと思っていたのに。
全て忘れてしまおうと決めたのに。
どうしてこんなところで会ってしまうのか。
偶然にしてはできすぎてる。
よりによって、聡史と一緒の時にリョウに会うなんて。