惑溺
 
「うん。それなら丁度いいかも……」

私はそう言いながら、手帳を出そうとバッグの中を探した。

「あれ?」

バッグの中に手をつっこんで手探りでその手帳を探してもみつからない。
大きめのシンプルな手帳は、バッグの中では一番存在感のある物なのに。

慌ててバッグを逆さまにして、中の物を床に広げた。



『どうした?』

「……手帳がない!」


床の上に散らばったバッグの中身。
そこに、私の探しているあの赤い手帳は無くて。

一気に目の前が真っ暗になる気がした。


どうしよう!どこで無くしたんだろう!?

昨日の記憶を必死で辿り、バーのカウンターで手帳を出していたのを思い出した。





「手帳、忘れてきちゃった……!!」




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