惑溺
『で、どうしたの?何かあった?』
「あ、あのね。私昨日のお店に忘れ物したみたいなんだけど、お店の電話番号わかんないかなと思って」
『ふーん。リョウくんのお店に?
アタシ電話して聞いてあげるよ。何忘れたの?』
「えーと、手帳なんだけど……。番号教えてくれれば自分で電話するよ」
『いいのいいの遠慮しないで。
アタシさぁ、この前リョウくんの携帯番号聞き出したんだけど、なんかかけるタイミングつかめなかったんだ。
丁度電話するいい口実できたからアタシ電話したいの』
別に遠慮してるわけじゃないんだけど。
嬉しそうにそう言って笑う博美に私は思わずため息をついた。
「なんか、博美は楽しそうでいいね」
『ん?楽しそう?』
「うん。電話かけるだけなのに、すごく楽しそう」