惑溺

そうだね。
普通は付き合ってる彼氏からプロポーズされたら、驚きはするものの、もっと素直に喜べるはず。
戸惑いしか感じなかった自分に、うんざりしてため息がでた。

「私も博美みたいに恋愛に夢中になれたらいいのにね……」

そんな独り言を呟きながら、ベッドの上に倒れこむ。
服にシワがつくのも、さっき放り出した携帯電話がベッドの上から滑り落ちるのも無視して、タオルケットをぎゅっと握って丸くなった。

電話越しに聞いた、博美の弾むような声が耳の奥に残っていた。
本当にあの彼の事が好きなんだろうな……。

高校の頃から全力で人を好きになり、恋愛にのめり込むタイプの彼女を、いつも心配しながら諌めたりしていたけど。
本当はうらやましかった。
周りが見えないくらい、人を好きになる博美がうらやましかった。

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