惑溺
恋に落ちる。心を奪われる。我を忘れる。
そんな感情、今まで一度だって体験したことがない。
そしてこれからも、私にそんな恋愛ができるなんて思えない。
今付き合ってる聡史だって、会社の先輩に紹介されて会うことになっただけで、博美のように彼を思ってときめくなんて感情はなかった。
人のよさそうな笑顔と、清潔感のあるおしゃれなファッション。
穏やかでゆっくりとした話し方に好感がもてた。
公立高校の教師という職業も、堅実な彼にふさわしいと思った。
3度目のデートの時に、聡史の方から付き合おうと言われて、特に断る理由も見つからなかったら頷いただけ。
そんな付き合いの始まりを、いい加減だとは思わない。
ただ、我ながら面白味の無い女だとは思うけど。
だから、いつだって恋愛に一直線な博美に『聡史さんの事本当に好き?』なんてストレートに聞かれたら
言葉に詰まってしまう。