惑溺
 

靴を脱ぐのももどかしくて、狭い玄関で立ったまま縺れるように激しいキスをした。
目の前の聡史のネクタイを、ぎゅっと掴んで手繰り寄せる。
そのまま乱暴に聡史の身体を玄関の壁に押し付けて、何度も何度も唇を合わせた。
それに応えるように、聡史の冷たい指が私の髪の間に滑り込み、ゆっくりと髪を乱す。


抱えていたバッグが私の腕の中から滑り落ちた。
音をたてて床に散らばる荷物の中で、視界の端に赤が見えた。

玄関の床に転がった、赤い手帳。



「聡史……ッ」

心の中でリョウを思いながら、聡史の名前を呼んだ。

「聡史……。お願い優しくしないで。
もっと、乱暴にして……」

口元を歪めて笑うリョウの顔を思い浮かべながら、
私は聡史に抱かれる。
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