惑溺
 

私は慌てて携帯を握り直して返事をする。

「はい!そうです松田です!
昨日お店に手帳を忘れてしまったと思うんですが……」

『ああ。ちゃんと手帳お預かりしてます』

「ありがとうございます!よかったあって。
それじゃあ今夜お店に取りに行ってもいいですか?」

ほっとしながらそう言うと、彼は少し困ったように言った。

『今日は店休みなんです』

そっか。
出来れば少しでも早くあの手帳を受け取りたいけど、休みならしょうがない。
明日、仕事帰りにお店に寄るしかないか。

そう思っていると

『急いでいるなら、これからうちまで取りに来ますか?』

と、彼がさらりと言った。
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